この本読みました!
レビュー
本書は(主にビジネスに関しての)普遍的な法則と、その法則から個人/企業/日本はどう戦うかを論考する大きく二つで構成されています。
普遍的な法則を抑えられれば次に何が起こるか予測できるし、予測ができれば何をすればよいかも想像できるということですね。
法則は「普及率の法則」、「五感の法則」、「発展段階の法則」など、人間、サービス・商品、ビジネス・社会に関しての普遍的な法則について解説されています。
個人的に印象に残っているのは五感の法則についてです。
- 神経密度が高い器官(視覚、聴覚)は簡単に刺激されるから、安価な娯楽(本、ゲームなど)で満足させられる。
- 味覚、嗅覚、触覚は本物志向になりやすい(高級料亭など)
確かに!と手を打ちました。
こういった法則から、今後どう戦うかを考えていくのですが、その際のヒントとなるキーワードが文化産業です。
文化産業とは、例えば寿司です。
- 寿司という文化が日本で確立したのは水産国だったから
- つまり、気候風土や産業が文化を決定したと言える
- 日本海の魚を取りつくしてもなお寿司を食い続けようと、インドマグロをとりにいったり、エビを外国で養殖したりする。(大量生産、工業化)
- これは寿司という文化が大量生産、工業化を創造し維持していることになる
寿司という文化が一大産業を創造している。これを文化産業と言っています。
要するに文化を創造し、一大産業化せよというわけですが、文化創造の動機は何か、文化産業化の条件は何か、日本が戦える領域はどこなのかなどなど、面白いテーマの論考が多分に含まれています。
ソース忘れましたが、どこかの戦略系コンサルは必読書になっているらしく、内容的にも納得です。
普段から戦略には関わらないように腐心している私ですが、非常に勉強になりましたので、全ての社会人にお勧めしたい本です。
刺さったフレーズ
下手な鉄砲を数撃とう。うまくいけば成功する。それがこれからの経営である。秀才はどうしても打率を気にする。だから「打率が下がってもいい」と社長が言ってあげないといけない。「三割打て」と言ったら、もう誰も怖がって打席に立たない。あるいは社長は、打率などに無頓着でホームランを狙う猛者を採用することである。打率は下がる時代である。これからの相手は、過去のない新人ピッチャーばかり。何を放ってくるかわからないーつまり市場は何を発しているのかわからないけれど、確かに何かを欲していて、それを捉えた最高の物なら爆発的に売れる。その金塊を目指して才能のある山師たちがどんどん集まってくる。それが最先端に立ったということの意味なのだ。
すぐに未来予測ができるようになる62の法則
ビジネス変化は速く何事も陳腐化しやすい、複雑性は増して初期計画の精度は低くなりやすい。
であるならばトライ&エラーの試行回数をどれだけできたかが、勝負の分かれ目になる。
という、今ではわりと当たり前なことになっていますね。(できてるかどうかは別として。笑)
ところで、分析者は、実務者側のトライ&エラーの支援する役割であることが多いです。
例えば、トライの効果検証が多いですね。
いわば、トライ&エラーというドラマの脇役ですよね。
一方、分析も一つのサービスなわけで、分析サービス※におけるトライ&エラーって何なのか?ということを今回は考えてみました。
※機械学習はそもそも分析が主役なので、今回はビジネス伴走してコンサルっぽく動くケースで考えます。
で、私なりの解釈はちょっと気になることをどれだけ仮説検証したかということだと考えています。
今回はなんで、仮説検証の量が大事なのかということ、そのための時間をどう確保するか?ということを考えていきたいと思います。
ちょっと気になることを検証して思考量を増やす
思考量が勝負の分かれ目
ビジネス伴走型分析での勝負の分かれ目は思考量だと考えています。
ようするにどれだけ考えたか?ということです。
こちら私の経験談的ではありますが、あまり異論もないと思います。
いちおう、史実的な参考テキストとして、アムンセンとスコット (朝日文庫)はお勧めしたいので、関心があれば読んでみてください。
南極点の初到達競争をめぐる話で、思考量が半端なかったアムンセンが勝ちましたという物語です。
では、データサイエンティストがどうやって思考量を増やすかといえば、「ちょっと気になることを定量的に検証して、解釈することを繰り返す」です。
- この施策検証のためには一週間分のデータでもいいんだけど、もう少し広範囲に見ておきたいなー
- Aという顧客セグメント狙った施策だけど、Bというところにも効果でてそうじゃない?
- このサービスって、Cというセグメントに使われやすいんじゃない?
- あいつ、うざくない?(これは違う)
etc・・・
など、今ここで求められているわけではないけど、気になることを確かめます。
またその検証結果を解釈すると、必ず「なんでだ?」となり新たな気になることが生まれます。
これ繰り返していると、勝手に思考量が増えていきます。
結果として、今ここで求められている検証に深みが出たり、新たに重要な仮説が作られたりと、アウトプットの付加価値が上がっていきます。
なお、分析対象についての情報不足が著しいプロジェクト初期段階では、気になることは書籍などの定性情報でまかなってください。
それ、常識ですよ?というようなことはおおよそ潰したうえでちょっと気になることを検証していきましょう。
自分事化の具体的習慣として
少し話はそれますが、「もっと自分事化しよう」「もっと考えよう」ということを言ったり、言われたりすることってよくあると思います。
なんとなく、具体的なフィードバックがあり、その隠し味的な言葉として使われることが多いかなと思います。
実際問題、受け取る側は具体的なフィードバックに注意が集中して、隠し味には一切気づかないということが多いかなと思います。
それもそのはずで、「もっと自分事化しよう」「もっと考えよう」は習慣の話をしています。
では、その習慣とは何か?
「ちょっと気になることを定量的に検証して、解釈することを繰り返す」です。
検証のための時間確保の方法
ちょっと気になるごときに時間を使いづらいというのは、正直な気持ちとしてあります。
なので、いかに節約するか、いかに捻出するかというところについて考えてみました。
冗長なデータを作ろう
一つ目は時間を節約しようという話です。
では、どうするか?というと、データを冗長に作っておくことをお勧めします。
特定の検証を作るために必要な項目だけのデータを作るのではなく、気になることを検証するために必要な項目も混ぜ込んでデータを作るようにしましょう。
2、3個項目を追加したところでロスタイムはほとんどありません。
さらに、普通の分析プロジェクトであれば、データセットを作る場面はいくらでもあります。
その時、その時にちょっとづつ項目を混ぜ込んでいけば、結果的にあなたが気になることのほとんどすべてを網羅できるはずです。
気にならないことは分析しない
二つ目は時間を捻出して、それを使うという話です。
捻出の方法は大きく三つあります。
- スケジュールのバッファ分を利用する
- やらないタスクを決めて、時間を捻出する
- 残業で対応する
どれかを決め打ちするというよりは、それぞれを組み合わせて何とか捻出していきます。
バッファを利用する、残業で対応は、普通のことですが、やらないタスクを決めるについては意識しておきたいポイントがあります。
タスクについては、自分やチームの中で判断できるものと、クライアントと調整すべきものがあります。
クライアントと調整すべきものについては、論理的にやる必要がないと判断できるものでも、言いだせなくて、なし崩し的に実行してしまうことってありませんか?
それをやらない方向にもっていくことを考えましょう。
私の場合はざっくり以下のようなコミュニケーションをします。
- クライアントが分析チームに依頼した背景を聞いて、うーん分析する必要あるかなー・・・と思っても、いったん受ける。(関係的に断れるなら、この時点で断る)
- すぐにやらずに、やるべきものも含めた検証候補を提示して優先度の相談をする
- 優先度高くないと判断されたら、一生やらない
ポイントは優先度高くないなら「やらない」という点です。
高・中・低であれば、高じゃなければやりません。
やらなくていいこことはやらずに、あなたが気になることをやりましょう。
まとめ
分析で価値を出すためには、思考量の多さが重要です。
ちょっと気になることを検証することで、思考量を積み上げていきましょう。
本筋の検証をするのは当たり前ですが、そこに+αすることで、あなたのアウトプットの付加価値が上がっていきます。
一方、ちょっと気になることに多大なリソースは避けません。
冗長なデータ作りで時間を節約すること、気にならない分析はやめることで時間を捻出して、リソースを賄っていってください。
以上、刺さったフレーズと活用についての考察でした。読書でキャリアを開拓しましょう!
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